Mirror Traffic

Stephen Malkmus & The Jicks ‘Mirror Traffic‘ の国内盤が本日発売となりまして。聴きまして。

プロデューサー・Beck Hansenが手がけたフル・アルバムはこれで3枚目となります(Jamie Lidellの ‘Compass’ もあるけどトータルなプロデュースではないので省くよ)。
 
本格プロデュース第一弾のCharlotte Gainsbourg ‘IRM’ は、プロデュースどころか曲も詞も書いている上に、歌い手の本業は歌手ではないので、”もろBeck” なアルバムとなりました。Charlotteもそう望んだんだし、そりゃ当然です。
 
その次のThurston Moore ‘Demolished Thoughts’ は、ストリングスを入れた構成がなんとなく ‘Sea Change’ を思わすことから( ‘Sea Change’ よりThurstonのソロ前作に近いのに)、こちらも “もろBeck”と評した人が多く、「Beckがプロデュースすると全部自分の色にしちゃうらしい」といったような、いささか腑に落ちない判定もちらほら目にしました。(Hamネット調べ)(ちらほらなだけで、大体は正当に高評価だけどさ)

Beck Hansenともあろうお人が、そんなあまっちょろい仕事をするわけがあるまいよと、私は思うのよ。アーティストの意向を読み取り、いかしたアイデアと持ち前の遊び心をちょっとプラスして、いままでとは少し違う、洗練されたアルバムを作る、そんなプロデューサーだと私は思っています。今回の ‘Mirror Traffic’ でそれが証明されたと思うのだが、いかがでしょうか。
 
………
 
わたくし、以前から述べている通り、PavementもMalkmusも正直ぴんときません。Malkmusの前作も聴いてみたけどグッとくるものはなく…(もちろん悪くはないし、むしろ良いとは思うけどね)。まあ、好みの問題なのでしょうがないです。そんな私が、このMalkmusファンにとって大事なアルバムについてあれこれ言うのも失礼だし、90年代オルタナへの慕情もないので、軽く感想を述べるに留まろう。

トータルで3回聴いてるけど(聴きながら書いてる)、聴けば聴くほど味わい深くなるような…。こういうフリーダムな感じのアルバムは往々にしてそうかもしれないけど、ただ脱力してるだけではない、若者には作れないであろう、特別な何かがある(気がする)。それは歳を重ねたオルタナ重鎮の大人の余裕や達観なのかもしれない。へなちょこなギターも、ふらりとしたヴォーカルも、だからこそ価値があるのだと、笑顔をもってこのアルバムに迎えられている気がする。それこそMalkmusの魅力なんだろうな。それを引き立て、洗練させたBeckのへなちょこへの愛情。”Beckの音” というのは聴こえないけど、Beckがはとても丁寧な仕事をしていると思うよ(具体的に言えないけどさ)。
 
いいね、大人のアルバムだ!
 
 
(しいて言うなら、国内盤ボートラの「Polvo」はBeck臭がちょっと強い)
 
 

4 Comments

  1. まだ聴いて無いんすよね!
    Pavementは少し聴いたけど、Malkmus作品はファースト、セカンドあたりまで聴いてとまってます。サード以降がジャケが良くてなんだかすごく気になるんですけど、いつもリストの下の方に入っているもんで、なかなか聴けてない感じなんですよね。今回のアルバムが良かったら少しだけ遡ってきいてみようかと思っている今日この頃です。

    ベック関係作品としてはサーストン(アナログ買ったよ!)も買ったけどこれもまだ消化不良気味なのでこちらもはやく聴き込みたいなあという感じですけど…

  2. ●manさん
    ‘Mirror Traffic’ 、私は結構好きです。
    メロディー重視で作ったってだけあって、気づいたら口ずさんでる、
    そして聴きかえしたくなるアルバムです。
    かといって他も聴こうとは今のところ思いませんが。
    サーストンも、今回のマルクマスも、長く聴けるアルバムかもなー
    と思います。

  3. Malkmus作品’Mirror Traffic’聴きました。

    正直これまでのアルバムとあまり変わんないなーという印象。
    特に序盤は10曲目ぐらいまで引っかかるところがない。
    しかし11曲目から急にサウンドが耳に入ってくるようになった。
    ベックっぽいところは全くなかったように思います。
    MalkmusがよりMalkmusらしくなった感じ。
    プロデューサーに徹したのだろうと推測される仕事ぶりだと思います。

    サーストンでも実は同じように感じていて、
    唯一ベックっぽさを感じたのがシャルロット作。
    やっぱり基本ミュージシャンではないので
    ベックがある程度オケをつくらなきゃならなかった関係で
    ぽさが出たんだろうと。

    というわけでプロデューサーとしては
    裏方に徹する自分の好きなタイプです。

  4. ●manさん
    Pitchforkのインタビューで言ってるとおり、
    自分がどうしたいかではなく、アーティストがどうしたいかで
    自分をどこまで関わらせるかを決めてるんだと思います。
    IRMはシャルロットがまっさらな状態だったので曲を書いて演奏もしたし
    (よってほとんどBeckのアルバムになった)、
    Demolished Thoughtsはサーストンひとりなので、
    コーラスや楽器をひいてバンドとしての手伝いもした。
    Mirror Trafficはバンドも曲もあったので、プロデュース以外をする必要はなく、
    まとめ係に徹した、、と。
    IRMはもちろん、DemolishedもMirror も同じ様なBeck特有の小綺麗さを
    私は感じるけどなー。

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