by Rii Schroer

2019年を軽く振り返る

Night Running ツアー

Cage The Elephant、Spoon のお三方に若手バンド1組を加えた4アクトで、1ヶ月半アメリカ各地を回りました。プチフェス形式は初めての試みでしたね。若バンド及び Spoon の時間帯にお客が少なかったりなど問題点もあったかと思うけど、バンドの皆さんの様子を見ても、お互い刺激しあった楽しいツアーだったのではないでしょうか。Beck は Matt とあんな風に馴れ合うなんて想定していたかしら?
Beck バンドとしては、Colors ツアーのベテラン勢に加え、Marc Walloch(ギター)、Cal Campbell(キーボードなど)が参加しました。控えめながら良い仕事をしていました。このメンバーで Paisley Park でセッションしたりもしました。

2019年のリリース

今年は何と言っても「Hyperspace」のビッグ・リリースがありました。各メディアの Album of the year にはあんまり食い込むことができませんでしたが、それはいつものこと。個人レベルでは好意的な評価が多く見受けられた気がします(適当)。
その他には「Paisley Park Sessions」、カバー7インチ、“Tarantula”、“Super Cool”、“Night Running”、Jenny Lewis のプロデュースなど、コンピやコラボもぼちぼちありました。

その他の出来事

ファッション的には、GUCCI をよく着てましたね。ミラノ・コレクションに顔を出したりさ。なぜ GUCCI なのか良くわかりませんが、2018年の年末にやった GUCCI 主催のイベントに出たのが最初だったと思います。CELINE を着始めたりと、引き続き Hedi Slimane もお召しです(やっぱスキニーがお似合いよ)。あと丸いサングラス、じゃらじゃらブレスレットをアクセントにしてました。
また、「Colors」でグラミー賞のいくつかの部門を受賞しました。プライベートではビッグな別離もあったりと Beck 的にはターニングポイントな年だったかもね。


 
来年は何をしてくれるのでしょうか。「Hyperspace」でこぼれた曲を EP で出すようなことを言ってましたが、結局いつものダスダス詐欺になるのかしら…。出してくれると生き返るんだけどなー私が。今年はアルバム外でも変化球的な曲が多かったので、来年は直球ド Beck な曲がもっと聴きたいなー ナー

すでにヨーロッパでのフェスの出演がぼちぼち決まっています。ツアーが組まれるのか分かりませんが、「Hyperspace」をどのように見せてくれるのか(そもそも見せてくれるのか)楽しみです。


 
HAMBECK は年明けに15周年を迎えます(来年こそ15周年です)。ベクベク言い続けて15年。大きな不運もなく、実にラッキーな15年でした。これからもこのラッキーが続きますように、Beck を追いかけ続けられますように、神のご加護がありますように、あなたの願いが全て叶いますように、粛々と、過ごしていきたいと思います。

今年もご愛顧ありがとうございました。

よいお年を! ゴーン

Hyperspaceの感想

私の聴き方による感想です。アルバム制作の背景などの解説や、他者との比較とかはないので、なんの参考にもなりません。あしからず。

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“Saw Lightning” がリリースされた時、ひょっとして「Hyperspace」は、デジタルなサウンドにトラディショナルな音をぶっこんだちょっとヘンテコでハイエネルギーな、そう、“Defriended” 3部作の続編のようなアルバムになるのでは!? と大いに期待した私。「Colors」も「Morning Phase」も(言ってみれば「Modern Guilt」も)そういう路線ではなかったので、そういう路線好きな私としては、待ちに待ったアルバムになるはずだった。ところがどっこい、満を持してリリースされたニューアルバムは、どちらかといえばダウナーで「Colors」の延長線上にあるポップ路線のアルバムでございました。まぁ、単なる私の見当違いだったんだけど、そこから立ち直るのに少し時間がかかってしまった。(ジャケットのカタカナも昭和な広告も理解不能だしさ)

もちろん「Hyperspace」は良いアルバムだと思う。シンセの美しい響きと Beck の味のある声が合わさった、哀愁漂う夜のアルバム。ファレルが『Highway music』と言っていたとおり、夜のドライブで聴きたいアルバムだ(午前2時の首都高とかきっと最高)。こういうムーディーなアルバムは初めてだよね。「Morning Phase」的な清々しい哀愁と、「Colors」的な胸キュンキュンに、夜の清い闇を加えたようなセンチメンタリズム。浮遊感はあれどボーカルが感情的なので、ドリーミーでありながら「Morning Phase」ほど達観しきれていない生々しい傷心に溢れている。

音の扱い方もちがう。Beck が『ミニマリストのファレルに対し、僕はマキシマリストぎみだから、もっとシンプルになるようがんばった』と言っていたとおり、従来のように音を盛りまくって奥行きをだすのではなく、音数を抑え、シンセサイザー特有のノスタルジックな音色と響きで世界観を作っている。エレクトロニカではあるが、しっかりした低音と Beck の渋い声が入ることで、今時の音楽とは一線を画した、独特な雰囲気に仕上がっている。

「歌モノ」と言って良いかもしれない。Beck は「Morning Phase」からボーカルにより感情を含ませ、際立たせるようになったけど、小手調べだった「Colors」を経て、よりエモーショナルでボーカル芸のある歌い方にトライしてみたって感じ。ファレルからの『あんたはシンガーソングライター・アルバムを作るべきだ』という提案に準じた方向性だと思うけど、その声に素直に泣ける曲、楽しくなる曲もあるが、ちょっとやりすぎじゃね?という曲もある。それがちょっと気になるんだなー。Beck の場合、エモな歌い方をするより、素朴に歌った方が聴く人の心に届くと思うんだー私は。もちろん曲のテイストによって歌い分けしているわけだし、納得してはいるんだけど、まあ、好みの問題だな。道は外れてもやっぱり Beck はフォークシンガーなんだよね私の中で。

…と、あれやこれや考えながらも、私はまだこのアルバムの魅力をいまいち消化できてなかったりする。何度聴いても実態が掴めないというか、没頭できないというか…。好きな曲はあるし、好きなポイントも数多いし、シャッフルで流れてくると「超いい曲じゃん?」と思うけど、うーん、もうちょっとハマりたかったなぁ…(1カ月後には違うこと言ってるかもだけど)。まあ14枚もあればそういうアルバムがあってもおかしくはないけどさっ。後半が落ち着いてて好きです。

歌詞は相変わらず(ほんとに相変わらず)孤独と癒されない悲しみに満ちている。ハイパースペースボタンを押すに押せない、どうしようもない痛みを抱えた『君と僕』の物語。Beck 曰く『どこかへ逃げたい人の心理状態』がテーマとのこと。「Colors」では自由になりたくて、「Hyperspase」では逃げたくて、救われたくて、でもどこかですでに諦めてる。…暗い! 暗いよ Beck! でも美しいんだなぁ。最後の曲 “Everlasting Nothing” で歌の中の人は、果てしなく続く無の中で打ちのめされながら、それでも走り続ける。ボルケーノの淵から帰還しても、自由になっても、ハイパースペースで逃げても、その先にはやっぱり無が続いているんだろうな Beck は。

 
『シンセ+ファレル』という旬とは言えないサウンドをなぜ今出すのか?という疑問はあるだろう。でも考えてみれば Beck はいつだってタイムレスなのだ。Beck は基本的にすでに有るモノを独自の魔術で作り変えて自分の作品にする人だし、作った曲を何年も寝かせたりもするので、リリースされたものが旬とずれていたりもする。でもそんなことは Beck には関係ないんだと思う。Beck は新幹線の発車のベルがなろうが、ドアが閉まり始めようが、歩みを速めたりはしないのだ(これはマジだ)。乗り遅れて困るとか、ドアに挟まって痛い目にあうとか、そんなことは念頭にないし恐れもしない。彼は人とは違ったタイム感の中で生きている。私は2004年に Beck を好きになったのだが、10年前の「Mellow Gold」も2年前の「Sea Change」も、時の金字塔「Odelay」も、どれも同じくらい新鮮に感じた。もし「Hyperspace」がその時代にあったら、たぶん他と同様に新鮮に感じただろう。『時代性』とか『ファレルの賞味期限』とかいう音楽そのもの以外の呪いから解き放たれた時、純粋なただの音楽として人の心に届くのだと思う。すでに心に届いている人には、別の角度から届くのだ。

 
(そしてまた1曲ずつ書きなぐります)
 

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From Getty Images

SiriusXMに出演

Beckはアメリカ衛星ラジオ SiriusXM に出演し、インタビューとライブ・パフォーマンスを行いました。放送はすでに終わってますが、SiriusXM は有料だし結局日本からでは聴けません。SiriusXM の Facebook がライブ映像を1曲アップしています。“Saw Lightning” です。

インタビュワーは Rolling Stone 誌の有名ライター David Fricke 氏。楽しいインタビューだったらしいです噂によると。ライブは1曲だけじゃないだろうし、あとでどっかで公開してくれないかしら…
上の写真は Getty Images より。

12/9 Live from Capitol Studios

Beck は本日、LA の Capitol Studios にてライブ・パフォーマンスを行いました。これはライブ配信されました。Youtube だったし映像が残るはずだとたかをくくっておりましたが残らずです(泣)。明日にでもアップしないかねぇ〜…

セットリストは下記です。60分くらいのセットでした。意外と長かった!

    Uneventful Days
    Wow
    Lost Cause
    Dark Places
    Saw Lightning
    Debra
    Mixed Bizness
    Devils Haircut
    Go It Alone
    Mixed Bizness (alternate version, partial)
    The New Pollution
    Dreams
    E-Pro
    Where It’s At
    Night Running / Good Times / Takin’ It to the Streets / Miss You / One Foot in the Grave / Drum Solo

(記憶によれば)まあまあエネルギッシュで、ゆるめなライブでした。決まっていたセットリストには最初の5曲しかなく、あとは成り行きでした。“Dark Places” は歌に入れなかったのか、1回やりなおしています。テクニカルな問題があったようなシーンもありました。“Saw Lightning” が終わると Beck はお客(100人くらいいたかな?選ばれしラッキーな人々よ)からリクエストを聞いて “Debra” をエレキで歌いました。“Mixed Bizness” と “Devils Haircut” はかっこよかったな。アレンジを変えてもう一度 “Mixed Bizness” を少しだけやったりと、Beck の進行が結構フリーダムなのでバンドが準備にあせったりするシーンもあったり。でも楽しいライブでした。“Where It’s At” を再スタートする時のカントダウンがかみ合わなくて何度も4、3、2、1って言ってたのが笑った。最後は演奏が終了する前にとっとと帰って行きましたとさ。

そんな感じかしら?

ちなみに Capitol ビルの前には赤いセリカ(ジャケットの車)が置かれていたらしいです。

このライブはダイレクトカットでレコードに録音され、販売もされるらしいです。こちらでサインインするとプレオーダーのお知らせを受け取ることができます。…でもこれ本当にリリースするのかな? 5曲目までかな? それにしても結構ゆるいライブだったし、「録音してるからちゃんとやりましょう」って意識がちゃんちゃら見られなかったぞ。 あやしい… あやしいぞ…
 


 
もし映像が再掲されたら Twitter でお知らせします。

from zimbio.com

12/7 KROQ Almost Acoustic Christmasに出演

Beck は本日、カリフォルニア州アナハイム(Anaheim)にある Honda Center で行われている KROQ Almost Acoustic Christmas 2019 に出演しました。このフェスは2日間あり、今日は初日です。

このフェスはライブ配信されました。現在リピート配信がされています。きっと明日の公演が開始されるまで繰り返し配信されてると思いますが、巻き戻しも早送りもできないので、まんじりと待つしかあるめい。
 icon-arrow-right Watch the KROQ Absolut Almost Acoustic Christmas Webcast This Weekend

セットリストは下記です。

    Loser
    Up All Night
    Girl
    Devils Haircut
    Wow
    Saw Lightning
    Dreams
    Uneventful Days
    The New Pollution
    E-Pro
    Where It’s At – Night Running

相変わらずエネルギッシュな Beck でした。びちびちしてました。配信だけかもしれないけど音がイマイチなところもありちょっと残念。「Hyperspace」からは “Saw Lightning” と “Uneventful Days” のみ。Beck の次が Cage the Elephant だったので “Night Running” で Matt が出てくるかと思いきや彼はこず、Beck が一人で Night Run しました。

これは “Devils Haircut”


 
逆に Cage the Elephant のステージに Beck がゲスト出演しました。曲はいつもの “Trouble”。


 
また、インタビュー映像があがっています。にこやかな Beck さん。

 
一番上の写真は zimbio.com より。Getty Images にも多々あり。

2019年の、つまり10年代の最後のショーはでした。Beck は最後に「ワンダフルなデケイドだった。次のデケイドで会いましょう」とおっしゃってました。デケイドおつかれさま!